2020年11月14日(土)
【オンラインおはなし講座】
日本の美術に興味津津―絵巻物をつくろう
絵巻物のおもしろさ見えてきたかな。『信貴山縁起絵巻(しぎさんえんぎえまき)』の「飛倉(とびくら)の巻」を参考にして絵巻物ってどんなものかを考えたけれど、どうだったかな。時間とか距離とか空の高さなどが、自由な考えや想いのなかで展開されていたね。これはとってもめずらしい絵画のあり方なんだよ。まして絵が動くなんて、こんな作品、ヨーロッパでは見たことがないんだ。そこに興味を持ってほしかったんだね。
自由にものを考えて、自分の方法を見つけていくこと、とても大切だね。時にはとんちんかんなことになってしまうけれど、時にはまちがえているといわれるかもしれないけれど、それは実際には、とんちんかんでもまちがいでもないかもしれないね。そういう考え方を、そういうものの見方を誰もがしていないから、わからないかもしれないよね。美術はそんなことがゆるされている数少ない分野なんだよ。どんな見方・考え方をしたってかまわないんだ。
絵巻物だってそうだね。いたるところに、今までヨーロッパの美術だけを中心に見てきた人には見えないもの、考えられないことばかりだったっていうこと。それではなぜ室町時代の人はそんな見方ができたんだろうね。ここがおもしろいし、みんなに考えてもらいたいんだ。心のかたすみにその「なぜ」をおいて、いろんな勉強していくと、いつかわかるかもしれないね。
ところでみんな最後まで描けたかな。先生みんなの絵巻物をはやく見たいな。感想や考えたことも聞きたいな。
今回のテーマはとても難しかったかもしれません。絵巻物は、なかなか目にできない形式ですし、まして、さわったことなんてないでしょう。つまり現代の日本の社会にとって、もはや「普通」ではないものになってしまったからです。普通でなくなってしまったものに床の間や障子・襖、あるいは畳などもそうかもしれません。でもそこには、日本の文化の面白さ、興味津津の営みの深さが潜んでいます。今回は美術を通して、西洋の人々にとっては奇妙な「日本の眼差しの面白さ」にふれていただきたいと考えました。
さらに、紙は滲むものでもあることを、体験してもらうことも考えました。今まで使用している紙なら滲まないのに、滲んでしまう驚きとつき合ってほしかったからです。上手くいかない、思い通りにならないことは大切です。そこから工夫が、新たな考えが生まれると信じているからです。失敗することが大切であることを伝えたいと考えています。
最後まで諦めずに4.5メートルの紙とつき合ってもらえたでしょうか。最後までつき合うように、一緒に絵巻物を括りながら、お話しながら進めてください。そこにまた新たな言葉が生まれ、そして絵も生まれてくるでしょうから。
講師: | 海老塚耕一(美術家、本学教授) |
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場所: | 参加者のご自宅(オンラインツールZoomにて) |
対象: | 小学1~6年生 |
人数: | 7名 |