講座レポート

「20世紀の表現―コラージュとデコラージュ、描かないで描く」
木嶋正吾さん

【2019年4月23日~7月2日(火)全4回】

現代の美術の流れに大きな影響を及ぼした表現のひとつ「コラージュ」。本講座では、木嶋正吾さんを講師に迎え、その歴史や現代のコラージュ作品が抱える問題にもふれながら制作を行っていきました。

「コラージュ」は、写真・チラシ・布などさまざまな素材を切り貼りして画面を構成する手法です。その始まりとされるブラックやピカソの他、レイモン・アンスやミンモ・ロテッラなど、20世紀以降、世界各地の作家が作品を発表しています。

ひとくくりにコラージュといっても、その手法を用いて作家たちが試みたことはさまざま。まずは、講師のお話と共に、たくさんの作品を見て「コラージュを利用して作家たちが追求した絵画の可能性」を考えていきました。
社会批判を目的とした視覚言語としての表現や、テクスチャーを際立たせるための仕掛けなど、作家たちの思考の痕跡を辿ることで、受講生の方々も「コラージュを用いる意味」へと眼差しが向かったようです。制作に入ると、新聞記事を読んだり、素材の触感を確かめたりしながら意図して素材を選び、制作する姿が印象的でした。

また、今回の講座は「剥がす」ことで表現する「デコラージュ」という手法もキーワードとなりました。それは、コラージュ作品が抱える肖像権や著作権の問題が背景にあります。「剥がす」と聞くと、単純に素材の原型が分からなくなり、それらの問題を回避しやすいのだと考えてしまいますが、その神髄はもっと深いところにあるのだと講師は言います。重要なことは「解体と再構築」。切り抜いて要素に分解した素材を組み合わせて"新たな意味を構築"することだそうです。
そこで初めて自分の作品になるという話を受講生は制作によって実感していたようでした。

今回の講座では、見た目の美しい作品をつくるという視点から解放され、表現の背景にある想い・意図に思考を巡らせることができたのではないでしょうか。

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