講座レポート

「○○世紀の芸術家列伝Ⅰ―19世紀」

【2019年4月20日~2020年3月14日(土)全20回】


本年度より、新たに開講した連続講座『○○世紀の芸術家列伝』シリーズは、毎年ひとつの世紀を舞台にその時代に生きた美術家・芸術家を眺めていく講座です。年間で十数人の講師それぞれが、ひとりの作家を取り上げ、その生涯や作品について語ります。登壇する講師は、評論家をはじめ、画家やデザイナー、詩人など実にさまざま。それは、この講座が単にその時代の作家について解説するだけのものではないからです。ここでは、講師それぞれがその作家・作品に出会い、感じ、今に繋がっている特別な物語も一緒に語られます。

シリーズの幕開けとなる第1回は、本講座開設のきっかけとなった1冊の伝記に関する話となりました。それは、16世紀にジョルジョ・ヴァザーリによって執筆された『美術家列伝』。ルネサンスを生きた計163名もの芸術家を記したその伝記は、時代のあり方と共に、生き生きとした芸術家たちの姿を私たちの前に浮びあがらせてくれるものです。この伝記がどのようなものかお伝えすることで「同じ時代を生きた作家たちの人生を眺め、その背景にある19世紀という時代のあり方を考えていく」という本講座の本意を理解していただけたのではないでしょうか。

第2回からは、いよいよ本年度の舞台である19世紀に移ります。19世紀はヨーロッパ・欧米諸国のアジア進出を経て、産業革命が興り、1900年にはパリ万国博覧会が開催された時代です。

通年講座の前半の第10回までは、ボードレール、ミュシャ、マネ、北斎、斉白石、モネ、スーラ、高村光雲についてお話いただきました。「写真を活用し、グリッドシステムで画面構成に臨んだミュシャ」や「眼が色を認識する仕組みから考えるスーラの描写」、「西洋と日本の美術のあり方に葛藤を重ねた高村光雲の生涯」など、その講師ならではの観点から聞ける話は実にユニークでした。

また、専門分野の異なる講師が、異なる作家についてお話されているにもかかわらず「写真の発明による、絵画の立ち位置の変化」「光や時間の概念」「ヨーロッパ・欧米諸国のアジア進出による美術の進展」など、それぞれの話でも共通項があり、その時代の姿が現れてくるのが不思議です。

第11回以降は、10人の作家を取り上げます。全20回を終えたとき、19世紀の姿はどのように浮かび上がっているのでしょう...。作家たちと出会いながら、一緒に「19世紀」という時代を眺めてみましょう。

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