講座レポート

「現代美術―こどもの「あそびじゅつ」から美術を考える」
海老塚耕一さん

【2019年4月10日~7月10日(水)全4回】

「あそびじゅつ」は、本学で小・中学生を対象に休日や夏休みなどを利用し開催している生涯学習プログラムのひとつ。ただモノをつくるだけでなく、感じる・見る・考えることを通して、美術とふれあい、さらにあそびながらその楽しさを発見するという講座です。今回は、そんなこどもの「あそびじゅつ」と同じ内容を大人講座で行い、そこから改めて美術について考えていきます。

第1回「型紙をつくって、版画にしよう」は、型紙をポンチやデザインカッターでさまざまなかたちにくりぬいてつくり、長い紙や多様な紙にインクで刷っていきました。ポンチを叩く金づちの音が鳴り響き、まるで工房のような雰囲気。長い紙にひとつのモチーフを繰り返し刷り、向きや色も変えていくと、まるで反物のようなひろがりのある模様の版画ができあがりました。

第2回「長い筆で描く不自由な絵」では、約90cmの棒の先に筆をつけて、手元から筆までに距離ができる不思議な方法で絵を描きました。一見すると、とても不自由な描き方。しかし、大きな絵を描くとき、ピカソなどの巨匠たちは、このような長い筆で大きく構図をはかり、描いていたそうです。
長い筆に悪戦苦闘しながらも、不自由だからこそ生まれる、勢いのある絵を思い思いに描きました。

第3回は「水の影を描くってどんなこと、どんな気持ち」。ガラス板の上に水で絵を描き、上からライトで照らすと「水の影」が浮かび上がります。さらに、それを紙に写し取り、そこからイメージを広げると不思議な絵のできあがり。暗がりのなか、水の動きを感じながら描いた絵は特別な1枚になったのではないでしょうか。

最後の第4回は「白い靴をキャンバスに」。白い無地のキャンパス地の靴に、アキーラ絵具という絵具を使って描きます。水に濡れても、ちょっとやそっとでは落ちない絵具です。動物の絵を描いたり、リボンを付けたり、ひとつとして同じ靴がありませんでした。四角いキャンバスでなく、凸凹のある立体のキャンバスに描く面白さ。自分だけの1足を履いて散歩をすると、いつもの景色がちょっと違って見えるかもしれません。

大人たちが行う「あそびじゅつ」。時にはこどもたちのつくった作品の写真を見ながら、異なった感性に驚く光景もありました。美術の楽しさ・愉快さがひろがっていく講座でした。

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