講座レポート

「墨―たのしむ・墨の世界を」
中野嘉之さん

【2019年4月3日~7月3日(水)全5回】

黒と白の世界。墨と聞くと、そんな世界を思い浮かべる方が多いかもしれません。けれど、墨の種類の違いや水の量、筆の動かし方などを調節することで、幅広い色調を引き出すことができます。今回は、黒と白の中間の色合いの幅を、演習や講義を通して探っていきます。

モチーフは、テッポウユリ・ツワブキ・ヤツデなどの植物。道端でも見かける身近な草花たちを、まずスケッチブックに鉛筆で写生していきます。それぞれの植物のかたちの違いを見つめながら、ひとつひとつ丹念に描いていきます。その後、和紙に墨をたっぷり含ませた筆で描きますが、鉛筆では描ける細部も、筆では思うようにはいきません。墨の付け方、筆の運びなどを試行錯誤していきます。
手前から後ろへ筆を動かしたり、立付と呼ばれる方法で葉脈を残して描きました。葉のかたちのひとつひとつの違いによっても筆の運びを変え、工夫をしながら思い思いの植物を表現していきます。

墨というひとつの素材のみを使って描かれた作品ですが、各人の筆づかいや色調により、ひとつとして同じようなものはありません。シンプルな画材だからこそ、それぞれの描き方によって植物の力強い生命力が表れているような、そんな作品がたくさん生まれていました。

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