【2019年2月22日~2月15日(金)全4回】
日常にあふれている機械漉きの紙は、アカマツやトドマツなどの木材を原料にしたものが一般的ですが、実はそれ以外の素材からも紙をつくることができます。今回は、講師に本学生産デザイン学科テキスタイル教授の柏木弘さんをお迎えし、木綿・麻・葛・雁皮・バナナといったさまざまな素材を使用した手漉きによる製紙、製本に挑戦していきました。
紙漉きの作業は、素材を煮るところから始まります。そうしてやわらかくなった素材を叩きほぐして繊維状にし、水に散らして混ぜ合わせたものを、簀桁(すけた)という道具で漉いていくのです。細かな繊維になって水に混ぜ込まれた素材は一見どれも同じように見えますが、実際に漉いてみるとそれぞれ繊維の大きさや混ざり方、厚み、色味などが全く異なることに、受講生の方々も驚いていたようです。
最終日には、自分の手でつくった何種類もの紙を製本して、自分だけの小さな「紙の博物館」をつくりあげていきます。紙の肌ざわりや強度を1枚1枚確かめながら、新鮮さと親しみをもって、紙とふれあうことができました。
普段何気なく使っている紙。身近であるがゆえに、私たちはその素材が持つ表情の違いを見落としてしまいがちです。しかし、表現を試みるとき、素材をどのように感受し、とらえ、選択するかはとても大切なことです。異なる素材で紙を漉き、その多様性を眺めたことで、表現に対する新たな眼差しを手に入れられたのではないでしょうか。