講座レポート

「植物で紙をつくり、墨で描いてみよう」
真下八十雄さん、中野嘉之さん

【2015年11月12日、19日、26日の木曜日】

本学日本画専攻の教員らが主軸となって新設された紙漉き工房。学生たちは日夜ここで紙漉きに勤しみ、自らの表現につなげています。今回はこの場所を使い、紙漉きの講座を行いました。

紙漉きというと、四角い木枠に水と素材を入れて、ふるいをかけるように揺する作業のイメージが強いですが、実はそこへ辿りつくまでに、大変な作業があります。今回は「楮(こうぞ)」を用います。木の皮を煮て、棒で叩いて繊維状にし、不純物を取り除きます。細い繊維になった楮を、大きな水槽の中で「ネリ」と呼ばれるトロロアオイの粘液と混ぜ合わせ、ようやく紙を漉く準備が整います。

「紙漉きの作業は制作というよりも農作業に近い」と講師は言います。はじめは何のための作業か分からなかった受講生も、話を聞き、素材にふれていくなかで、繊維が紙になっていくイメージが湧いたようです。材料を混ぜ合わせるような力仕事も、受講生同士で協力し合い、紙漉きのほとんどの工程を体験することができました。

講座では紙を漉くだけでなく、最終日、実際にそのつくった紙に墨で絵を描いてみました。使い慣れない墨と、自分で漉いた紙に戸惑いながらも、新鮮さと親しみをもって、紙とふれ合うことができました。

普段私たちは、何の疑いもなく機械でつくられた紙を使い、素材に対する問いかけを忘れがちです。しかし、表現をする者にとって、自分が何を使うかというのはとても重要な問題になってくるはずです。紙漉きの作業を通して、そこから広がっていく「美」を考える貴重な時間となったのではないでしょうか。

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