【2015年3月5日、12日(木)】
土地には、記憶が残っています。区画整理して近代都市になったはずの東京でも、江戸時代の街並みを想起することは可能です。今回は、江戸時代に描かれた挿絵入りの観光案内書とも言える『江戸名所図会』とともに月島から佃島、永代橋、茅場町まで、江戸の情緒を感じる小旅行へ出掛けました。
月島の隣にある佃島は、石川島の高層マンションを背景に、ぽつんとタイムスリップしたような街です。小さい区画のなかに昭和レトロな住宅が林立し、細い通路の傍らにお地蔵さんが現われる。晴天のなか、紅梅を眺めながらスタートしました。
佃島は、徳川家康が、入府する際に摂津国の佃(現在の大阪西部と兵庫東部)より呼び寄せた漁師たちによって埋め立てられ、整備されてできた街です。そのため、故郷の村の名前である「佃」という名称を用い、また故郷の神社から分霊して住吉神社が建立され、今に残っています。高度な技術があった佃島の漁師には、幕府に魚を献上する権利が与えられ、その残りを日本橋で販売したことで、魚河岸ができ、その後、築地市場へとつながっていったそうです。
次の目的地をめざして、隅田川沿いを歩き、中央大橋を渡ります。そこからは、スカイブルーの永代橋の姿が望めます。永代橋は、以前は、やや上流の豊海橋の先に架橋されていたそうです。江戸時代に描かれた永代橋は、もちろんそちらの方。旧架橋の麓に立ちながら、綱吉50歳のお祝いで創架された過去の永代橋と、関東大震災後に架けられた現在の橋の歴史を学びました。
月島駅から茅場町への道のりは、春を感じさせる陽光のなか、満開の梅の花と、たくさんの桜のつぼみの下を歩き、春の訪れを感じる江戸散策となりました。