四季株式会社

チームワークに長け、人気演目を支える
技術スタッフとしてリーダーシップを発揮

俳優・技術スタッフ・経営スタッフ約1300名で組織される、世界的にも最大規模の演劇集団。東京、大阪、名古屋、札幌を中心に国内に7つの専用劇場を持ち、年間3000回以上を上演(興行)、観客動員数約300万人をほこる。
https://www.shiki.jp/
取材日:2019.02.22、02.24、04.23

取締役
技術・劇場担当
近藤 建吾さん

バランス感覚も重要な才能。
芸術的センスに加え、
協調性の高さが多摩美の特徴

劇団四季は、全国7箇所にある専用劇場を中心に日本各地域で公演を行うほか、海外の舞台芸術振興を目的にさまざまなプロジェクトに取り組んでいます。今年は4月から、ファミリー向けミュージカルとしては26年ぶりとなる新作『カモメに飛ぶことを教えた猫』を、劇団の若手クリエイターが中心となって企画し上演しています。

現在は5名の多摩美卒業生が技術部門に在籍しており、それぞれ『キャッツ』や『リトルマーメイド』、『アラジン』、『パリのアメリカ人』といった人気演目のスタッフとして舞台を支えています。また、公演時には現役の多摩美の学生にアルバイトとして参加してもらうこともあります。多摩美の卒業生はまじめで集中力が高い印象で、芸術的センスはもちろんですが、さらに協調性が高くチームワークに長け、リーダーシップを発揮できるのが特徴ですね。劇団はチームプレーなので、バランス感覚も重要な才能なのです。

求めるのは業界を総合的に活性化させていくような力強いリーダー

エンターテインメントには、観る人に人生の感動、生きる喜びを届けたいという思いが根本にあり、演劇はその手段の一つです。劇団四季を目指し集まる人は、舞台美術や音響、照明といった技術を極めたい人、とにかく演劇が大好きという人などさまざまですが、出身学部や専門などに関係なく、幅広い人材に飛び込んでほしいと考えています。
「劇団に入団する」ということは、多くの方にとって想像しにくい世界かもしれません。劇団四季は創立時より、エンタメをビジネスとしてどう成り立たせられるかを課題として取り組み、やりたいことを力いっぱいやれる環境を築いてきました。たとえば、衣裳や舞台美術など自分の専門を突き詰めていく者もいれば、私のように現場を離れて経営側にまわる者、指導側に就くという道もあります。また、独立する人、海外に活躍の場を求める人もいます。何も、ずっと同じ場所に留まる必要はありません。求めているのは私たちと同じ志を持った人。広い世界に羽ばたいて、この業界を総合的に活性化させていくような、力強いリーダーが生まれることを求めています。

技術部 コスチューム
『キャッツ』担当チーフ
上野 有美さん
2014年|テキスタイルデザイン卒

布による表現全般を身につけ
代表作『キャッツ』の
衣裳チーフとして活躍

『キャッツ』の衣裳で、チーフを担当しています。舞台衣裳と「衣装(=服)」との違いは、俳優が最高のパフォーマンスを発揮できるようにあらゆる動きに対応できることと、舞台映えすることを目的に作り込む点です。最終的にはお客さまに感動を届けることが一番で、そのために俳優が気持ちよく舞台に立てるようサポートをするのが私たちの仕事。衣裳担当として、良い衣裳を作るというより、それを身に着けた俳優がどうあるかを意識しています。観る人のために自分がすべきことを考える姿勢は、劇団四季の伝統でもあります。公演後に俳優さんから「ありがとう。前より動きやすくなった」と言われると、日々やりがいを感じます。

“テキパ”を観て「絶対ここに行きたい」と憧れた

子どもの頃からダンスを習い衣裳を手作りしていたのですが、その頃から、布そのものに興味がありました。高校生の頃、多摩美の芸術祭で「テキスタイルパフォーマンス」(衣裳制作や演出も全て学生が企画する、約30年の伝統ある舞台。通称、“テキパ”。)を観て「絶対ここに行きたい」と憧れ、多摩美に入学しました。4年間で、素材の知識や織り、染めの技術など、デザインから見せ方に至るまで布による表現全般を身につけたことは、今の仕事の強みとなっています。

一つにこだわらず、舞台完成までのゼロから百に携わりたい

私はずっと舞台に係わっていたいと考えていますが、そのフィールドは日本に限らず海外だったり、衣裳に限らず空間全体のデザインであったりと、いろんな可能性があります。一つにこだわらず、舞台完成までのゼロから百に携わってみたいですね。幸い劇団四季は、やる気と才能があれば他の領域に飛び出す機会が大いにあり、それを後押ししてくれる劇団です。私も挑戦し続けたいですね。

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仕上がった『キャッツ』の衣裳にさらにペンを入れ、リアルな猫の毛並みを表現する上野さん。
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技術部 舞台監督助手
『リトルマーメイド』下手舞台チーフ
渋谷 聡美さん
2015年|環境デザイン卒

各担当の仕事を理解して
協同作業を促し
『リトルマーメイド』の世界観を守る

私の仕事は、舞台監督助手として俳優、照明、舞台美術、音楽や衣裳などあらゆる要素を束ね、観客に感動を届けるために「夢の世界」を守ることです。現在は『リトルマーメイド』の舞台裏を仕切っています。

舞台が成功すればプレッシャーを上回る喜び

私は高校時代から、「将来は夢が広がるような空間を生み出したい。だからこそ、建築やインテリアのようにジャンルを絞りたくない」という思いがありました。そんな私にとって、基礎を学んだ上でインテリア・建築・ランドスケープと、広く横断して学べる多摩美の環境デザイン学科のカリキュラムは最適でした。また、各担当の仕事を理解して協同作業を促す過程は、多摩美での経験そのもの。多摩美ではチーム制作が多かったので、全体を見る目が養われたことが今につながっています。

一つ間違えば取り返しがつかない現場での責任は非常に重く、逃げ出したくなることもあります。そんな時、卒業前に先生に言われた、「ここで、楽しかったことを忘れないで」という言葉を思い出します。学生時代、課題は苦しかったけれど達成するたびに自信と勇気が湧き、だからこそ毎回乗り越えることができました。同様に今、どんなに大変でも舞台が成功すればそのプレッシャーを上回る喜びがあり、仲間に「渋谷に任せて良かった」と言われれば、新たな次への力が湧きます。多摩美という自分を肯定してくれる場所で積んだ経験が、今の私を支えてくれています。

目指すものが大きいほど壁はある

私は入団面接当時、大道具などの舞台美術を希望していて、実は入団するまで舞台監督という仕事をまったく理解していませんでした。面接や説明会などでの対話を通して、「渋谷は舞台監督の方が向いている」と判断してくれたのかもしれません。思い返せば今の仕事は、高校時代から抱いていた「ジャンルを絞りたくない」という思いとも通じていて、当初は思わぬ配属に驚いたものの、新しい可能性に出会えたことを幸運に思っています。
将来的には、演劇に関わらず大きな空間を生み出したい、そのために力をつけたいという新たな目標を持っています。わからないからこそ飛び込んでいけば面白い、目指すものが大きいほど壁はある、やりたいことさえぶれなければきっと行きつく。私はそう信じています。

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『リトルマーメイド』の見せ場の一つである、ヒロインのアリエルが人魚から人間の娘へと変身を遂げるシーンの監督責任者として、舞台裏を仕切る渋谷さん。
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※掲載者の所属などは記事公開時のものです。