企業の人事担当者・卒業生に聞く/メディア

デザインはますます需要が高まる分野。 多摩美は広がる職種の入り口にある

NHK

公共放送事業体。国内のテレビ・ラジオ放送(総合テレビ Eテレ BS1 BSプレミアム ラジオ第1・第2 FM)のほか、国際放送を行う。
https://www.nhk.or.jp/

2018年12月掲載


ニーズを汲み、ディレクターの意図を理解してわかりやすくビジュアルにする力

吉田 真也さん
吉田 真也さん

NHK
デザインセンター
映像デザイン部 副部長

NHKでは現在、スーパーハイビジョンの本格放送開始と、東京オリンピック、パラリンピックに向けた準備に力を入れています。「公共放送」から「公共メディア」へと、放送そのものの在り方が大きく変わろうとしているいま、放送だけでなく組織全体も変わります。その中においてデザインセンターでは、いかに情報をわかりやすくビジュアル化するかというキーワードは変わらず、時代や技術の変化に対応しています。

仕事に対する意識の高さが強み

大河ドラマや紅白をはじめ、数多くのNHKのキラーコンテンツに多摩美の卒業生が参加していますが、共通して「締め切りへの意識が高い」など、仕事に対して真面目な印象があります。守るべき部分をちゃんとしようという意識が強く、これは大きな強みだと思います。テレビの制作現場はチームで作りあげる世界なので、いかに個人的なこだわりがあろうとも、周りに負担をかけてはいけません。そういう意味では、自分がやりたいことだけを突き詰めるようなタイプの人には不向きな世界です。

デザインはこれからますます需要が高まる分野

NHKがデザイナーに求めるのは、ニーズを汲み、ディレクターの意図を理解して表現する力を持った人です。ディレクターや作家によって文字で書かれた企画書や台本から空間や造形を作りあげるわけですが、その書かれた背景や文字の中に込められた思い、つまり、書かれていないものを読み取ってビジュアルにする力。それには相手が何を求めているかを素早く読み取る勘の良さと、コミュニケーション能力が必要です。学生の方たちにはぜひ、その部分を十分に鍛えてほしいと思います。そして、凝り固まらず柔軟な頭で、将来仲間に加わってほしいですね。技術力や知識などは、後から十分身に付けられますから。

いま、メディアやコンテンツの枠組みはどんどんなくなりつつあり、デザインの捉え方も幅が広がりました。デザインは、これからの社会でますます需要が高まる分野だと思います。ずっと勉強し続けなければならない世界ですし決してラクではありませんが、多摩美は、広がり続ける職種の入り口にあると思います。


企画のイメージ構築から関わるなど
プロデューサーと現場との橋渡し的な役割を担う

清 絵里子さん
清 絵里子さん

2007年|環境デザイン卒

NHK
デザインセンター
映像デザイン部 デザイナー

最近では、高橋一生さん出演の『NHK スペシャル・人類誕生』のアートディレクションに携わりました。デザイナーの仕事は、美術セットやCG、タイトルロゴのディレクションはもちろん、出演者の提案まで、多岐にわたります。これまで担当した番組は、大河ドラマ『龍馬伝』からバラエティー、発達障害キャンペーンなどジャンルは幅広く、また、セットのように目に見える部分だけでなく企画のイメージ構築から関わり、コンセプトデザイン、プロデューサーと現場との橋渡し的な役割など、作品作りの全体に携わっています。

いまの仕事は、ある程度決まったものを作るというよりも、ディレクター寄りといいますか方向性を作る部分から関り、みんなが納得した上で築き上げていけるところにやりがいを感じています。

信頼関係を築き、受け手を意識するプレゼン力を培った学生時代

幼少期からテレビっ子だった私は、この業界を目指して多摩美を志望しました。その学生生活や課題を通して得た中に、コミュニケーションスキルがあります。日々色々な業種の初対面の方とプロジェクトを動かすためには、自分を知ってもらい、「私はあなたの味方ですよ」と伝えて信頼関係を築くことが必須だからです。また、講評で培われた受け手を意識するプレゼン力は、現在の仕事にはもちろん、採用面接の頃から効果を発揮することができました。相手を退屈させないよう、見せ方や話す順番、話し方などを工夫したのです。そしてグループ課題仲間とフォローし合いながら創り上げていく体験は、そこで班長として世話役やマネジメントを担当した経験も含め、まさにデスク(管理職の補佐的な役割)という立場にあるいまの業務に、そのまま生かされています。

やってみることで道が開ける、その繰り返し

学生時代共に学んだ同級生たちは現在、国内外で賞を取るなど華やかに活躍しています。卒業後も変わらずこうした刺激が受けられるのも、多摩美だからこそだと思います。社会人となり仕事に責任を持つようになったいま、「できない」は許されません。怯まずとにかくやってみることで、また新しい道が開ける、その繰り返しです。