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昭和大学×多摩美術大学 医療現場の課題をデザインで解決


昭和大学と本学とは、2016年10月に包括連携協定を締結して以来、積極的な連携活動を行っています。その一環として、昭和大学保健医療学部作業療法学科の授業「身体障害作業療法技術論」に、プロダクトデザイン専攻の学生が参加。2018年の前期を通して、藤が丘リハビリテーション病院の見学や、麻痺の残る方のための自助具(福祉用品)を使った調理などを体験するなど、普段はデザインを学ぶ学生が、医療の専門的な見識を深めて、課題解決のために合同で取り組むという連携授業を行いました。

グループワークのアイデアから便利グッズが誕生

6月に行われた病院見学の授業で、実際に自助具の必要な在宅生活を送っている方から、生活の中で困っていることをヒアリングしました。聞かれた声として、室内移動の際に杖の置き場がなく、立てかけてもすぐに倒れてしまい、何度も身を屈めて取らなければいけない、という日常動作の課題が挙げられました。そこでこの課題を解決する道具を、両校混合のグループで検討。出されたアイデアを元に、昭和大学の渡部講師が「吸盤と粘着材を組み合わせ杖に固定できるもの」を作り、それをお渡しして杖につけていただいたところ、「どんなところにも安定して使えるため、非常に良い」と喜ばれ、そのまま自宅で利用することになった、という成果を得ました。

機能改善だけでなく、心理面まで考慮した自助具やサービスを提案

7月12日、この授業全体のまとめとして、昭和大学で成果発表会が行われました。多摩美の学生からは、日常生活の困難さから引きこもりがちな方も外出が楽しくなる自助具の提案や、身体的機能が制限された中でも扱える楽器や財布の提案、モノではなく行動のシステムを変えることで心理的負担を軽減する提案など、1人1作品ずつ多彩なアイデアが発表され、映像やパネル、試作品で実演しながらプレゼンしました。両校の先生とも、「これからは異なる専門領域の人たちが、共にイノベーションを起こしていく時代。ぜひ、混成チームによる研究を実現させたい」と、今後への期待を語りました。

<学生インタビュー>

昭和大学・伊藤めぐりさん「多摩美の学生は、たとえ対象者への医療的な知識がなくても、情報から想像をふくらませアイデアを生み出していくところが私たちと違う、と感じました。また、発表のためにしっかりと事前準備をしていることにも驚きました。」
プロダクト4年・寺永有希さん「昭和大学の学生は、対象者を専門的目線で理解するところから入りますが、思考を重ねモノをイメージし始める私たちとは、目的は同じでもまったくアプローチが異なります。ワークショップでは、お互いの差異が組み合わされたような、良い手応えを感じました。」

期間:2018年4月~7月
昭和大学 三橋幸聖講師 渡部喬之講師 鈴木憲雄教授 鈴木久義教授
多摩美術大学 プロダクトデザイン・大橋由三子教授、山本秀夫非常勤講師、重野貴非常勤講師、安次富隆教授

昭和大学で行われた発表会を終え、全員で記念撮影
昭和大学の実習室で、実際に使われている意思伝達装置を触りながら、アイデアを探る多摩美の学生たち
釣谷淳さんが制作したアウトドアウェア
谷川原結衣さんが制作した雨具。
釣谷さん、谷川原さんの両作品とも片麻痺を想定し片手で脱ぎ着できるよう工夫されている
発表会では各々の成果作品をプレゼン。昭和大学の教員と学生は実際に手にとって、その作品を確かめた