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開かれた枠組みで新たな創作の世界を開拓する大学院プログラム「エクスペリメンタル・ワークショップ(EWS)」の創設


多摩美術大学は2020年度後期より、大学院生対象の横断型プログラム「エクスペリメンタル・ワークショップ(以下、EWS)」を創設します。「エクスペリメンタル(実験的)」という単語を冠したこの試みは、本学がこれまで取り組んできた研究教育をさらに発展させていくために、「世界的な視野」と「領域横断的な活動」を目指す新たなプログラムとして開設するもので、学科や専攻の枠組みを超えて、学生が主体的に取り組むプロジェクトです。

奇しくも、今日のCOVID-19の状況は「世界」や「社会」の意味をもう一度考え直さなければならない、大きな出来事となりました。このような時代だからこそ、これまで以上に大胆な実験と創作の必要性を実感している学生に向けて、意義深いプロジェクトとなることを目指しています。

本プロジェクトの立ち上げに際して2名の特任教授を迎えました。2010年にカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞したタイを代表する映画監督、アピチャッポン・ウィーラセタクン教授と、2019年、森美術館で個展『魂がふるえる』を開催した世界的アーティスト、塩田千春教授です。全体を取りまとめるEWSの主任教授には、本学メディア芸術コースの久保田晃弘教授が着任し、さらに学内外のゲスト講師も迎えながら、集中ワークショップ、レクチャーシリーズ、オープンゼミの3つの構成で実施していきます。特定の専攻に限らず、学生が自由に受講できるプログラムであることも大きな特徴です。

「EWSの開設にむけて」メッセージ

建畠晢学長

多摩美術大学では本年度から大学院にエクスペリメンタル・ワークショップ(以下、EWS)を開設します。EWSは各専攻の枠を越えて自由に選択できるカリキュラムで、年に一回、ないしは二回、担当教員によって開催される10日程度のワークショップを中心に構成されますが、加えて通年のゼミや特別講義によるフォローも取り込まれています。
大学院では学部と同様に専攻ごとに充実したカリキュラムが設けられており、その各専攻の特質を生かした教育研究と創作の方針が、本学ならではの求心力のあるシステムとして大きな成果を上げてきたといえるでしょう。半ば自立した専門的な教育は今後も維持していかなければなりませんが、その一方で領域横断的な表現や未開拓の分野への取り組みは、必ずしも十分ではありませんでした。EWSを開設した主目的は、まさにその点にあります。
アピチャッポン・ウィーラセタクン教授は映像、塩田千春教授は大規模なインスタレーションを中心にしながら、多領域にわたる制作活動を展開しています。お二人のワークショップに参加し、国際的な舞台の第一線に立つアーティストの息吹きに触れることは、院生の諸君にとって他には得難い体験となることでしょう。EWSのささやかにしてまた大いに野心的でもあるスタートに期待して下さい。
(「エクスペリメンタル・ワークショップ(EWS)の開設にむけて」より一部抜粋)

EWS主任教授 久保田晃弘教授

実験映画、実験音楽と同じように、実験教育というものもあるべきではないか—— ここで実験とは「実際に行ってみるまでその結果がわからないものごと」の総称です。創作は常に予測不可能性や、自明ではないものと一体です。もちろん、誰もが失敗することに対する恐れがあります。実験だから失敗していい、ということでもありません。しかし、うまくいかない可能性を携えているからこそ、そこに未だ見ぬ何かがあることを感じているからこそ、人は実験に魅了され、実験の虜になります。今年度から新たにスタートするEWSでは、「実験とは何か」「ワークショップとは何か」ということを改めて問い直すことを出発点としながら、理論と創作が一体となった場における、開かれた、そしてハイレベルなプロジェクトを、ここ多摩美術大学大学院に実装したいと考えています。
(「エクスペリメンタル・ワークショップ(EWS)の開設にむけて」より一部抜粋)

特任教授のご紹介

アピチャッポン・ウィーラセタクン教授

アピチャッポン・ウィーラセタクン Photo:Courtesy of Kick the Machine Films

1970年タイ・バンコクに生まれ、タイ東北部イサーン地方コーンケンで育つ。チェンマイ在住。タイを代表する映画監督でありアーティストでもある。長編映画『ブンミおじさんの森』で2010年カンヌ国際映画祭最高賞(パルムドール)受賞。
http://www.kickthemachine.com/別ウィンドウリンク

© Apichatpong Weerasethakul

塩田千春教授

Chiharu Shiota
Berlin, 2020
Photo by Sunhi Mang

1972年、大阪府生まれ。ベルリン在住。生と死という人間の根源的な問題に向き合い、「生きることとは何か」、「存在とは何か」を探求しつつ、その場所やものに宿る記憶といった不在の中の存在感を糸で紡ぐ大規模なインスタレーションを中心に、立体、写真、映像など多様な手法を用いた作品を制作。2008年、芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。2015年には、第56回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館代表に選ばれる。2019年、森美術館にて過去最大規模の個展『魂がふるえる』を開催。また、南オーストラリア美術館(2018年)、ヨークシャー彫刻公園(2018年)、高知県立美術館(2013年)、国立国際美術館(2008年)を含む世界各地の個展のほか、国際展などのグループ展にも多数参加。
https://www.chiharu-shiota.com/別ウィンドウリンク

Uncertain Journey, 2016/2019
Installation view: Shiota Chiharu: The Soul Trembles, Mori Art Museum, Tokyo, 2019 
© Chiharu Shiota and JASPAR, Tokyo, 2020
Photo: Sunhi Mang, Photo Courtesy: Mori Art Museum, Tokyo

塩田千春教授から学生の皆様へメッセージ

© Chiharu Shiota and JASPAR, Tokyo, 2020

主任教授のご紹介

久保田晃弘教授

多摩美術大学情報デザイン学科メディア芸術コース教授/アートアーカイヴセンター所長。芸術衛星1号機の「ARTSAT1:INVADER」でARS ELECTRONICA 2015 HYBRID ART部門優秀賞をチーム受賞。「ARTSATプロジェクト」の成果で、第66回芸術選奨文部科学大臣賞(メディア芸術部門)を受賞。近著に『遙かなる他者のためのデザイン―久保田晃弘の思索と実装』(BNN新社/2017)、『メディアアート原論』(フィルムアート社/畠中実と共編著/2018)、『インスタグラムと現代視覚文化論』(BNN新社/きりとりめでると共編著/2018)、『世界チャンピオンの紙飛行機ブック』(オライリージャパン/監訳/2019)などがある。

本講座の構成について

この講座は、大きく以下の3つのパートから構成されます。

1. EWS 集中ワークショップ(特任教授が直接行う)※
2. EWS レクチャーシリーズ(全学内外で聴講可能)
3. EWS オープンゼミ(EWS主任教員および担当助教による、週1回実施)

※2020年度については、両特任教授とも2021年3月に開講するものとし、特任教授2名のワークショップは時期をずらして開講します。

スケジュールについて

2020年9月14日(月)16:30〜八王子キャンパス「レクチャーCホール」で説明会を行います。
参加希望の学生はCampusSquareをご覧ください。