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オスロ国立芸術大学×多摩美術大学ノルウェー大使館で『Connecting Wool』研究発表


ノルウェー政府の助成を得て始まった4年間の協同研究

2018年10月より実施されているオスロ国立芸術大学デザイン学科との国際交流プロジェクト『Connecting Wool』Joint Studio2の研究発表が、3月29日、ノルウェー大使館で開催されました。
『Connecting Wool』は、ノルウェーの公的機関(ノルウェー教育国際協力センター)から助成を受け、人物相互派遣を通じて国際交流を促進する(ノルウェー教育国際協力センター)「SIU-UTFORSKパートナーシッププログラム」採択プロジェクトとして実施中です。ノルウェー北部に生息する北方固有種、ワイルドシープの毛の新しい素材活用方法を探究するプロジェクトとして、本学のプロダクトデザイン専攻とテキスタイルデザイン専攻が参画し、素材研究をベースにデザイン提案までを行いながら、人材の育成と教育メソッドの構築を目指しています。テキスタイル・インテリア・ファニチャー・ファッション、アートなど、さまざまな領域が協同しながら進めることで、両校の国際交流をより深めることも意図されています。取り組みの第一弾として2018年10月には、Joint Studio 1『RAW』を実施。本学の学生8名(テキスタイル4名、プロダクト4名)と教員2名がノルウェーを訪問し、オスロ芸大の教員・学生と共にワイルドシープの生育地である環境保全地区や農場、羊毛関連企業や紡績工場などでリサーチを実施しました。オスロ芸大の学生7名と本学学生とがペアになって課題に取り組み、大学のスタジオで集中的なワークショップと発表を行いました。

両校学生の混成5チームが大使館で発表

第二弾として、Joint Studio 2『TECH』を実施。オスロ芸大より8名の学生が来日し、テキスタイル8名、プロダクト9名の学生が混合した5チームに分かれてフィールド・リサーチとワークショップを行いました。ノルウェー大使館、21−21design site、株式会社アシックス、日本ヴォーグ社などから専門家を迎え、さらにノルウェー文化に精通するファションジャーナリスト、ノルウェーデザインを発信しているブランドの関係者たちを前に、各チームは、それぞれがフィールド・リサーチで得た視点に基づくウールの活用を提案しました。フィールド・リサーチで知り得た襤褸(ぼろ)文化に共感して「現代における襤褸(ぼろ)とは何か?」と問いかけたチームがありました。 ウールのセーターに現代的な色と模様の刺し子で継ぎはぎ繕う行為に、時間を継ぎはぐという現代の切り口を重ね合わせ、地下鉄の電車内でウールを紡ぎ、その糸で刺し子するパフォーマンスを行うなど斬新な提案がなされました。
参加したテキスタイル専攻の学生から、「言葉の壁からコミュニケーションの難しさを痛感しましたが、短期間ながら、相手が伝えようとしていることは理解できるようになりました。デザインという共通言語によるつながりを感じました」といった感想や、また、プロダクト専攻の学生からは「ウールという素材に馴染みがなく、また編み物の経験もないので、最初はテキスタイルの学生に遅れを感じていました。ですが進行するなかで、イメージを立体的に説明できることが自分の強みだと客観的に知ったこと、新たな素材に出会えたことは大きな収穫となりました」といった感想が聞かれました。
本プロジェクトでは、2021年までにJoint studio3&4、学生相互派遣、協力企業でのインターンシップなども予定されています。

実施期間:2018年10月~2021年12月 
担当教員:テキスタイルデザイン 川井由夏教授
     プロダクトデザイン 濱田芳治教授
     オスロ国立芸術大学=Kirsti Bræin教授、Toni Kauppila教授

東京、群馬でのリサーチとワークショップの研究成果を、ノルウェー大使館で発表した。
「現代における襤褸(ぼろ)とは何か?」と問いかけたチームが、刺し子で継ぎはぎしたウールセーターを見せながらプレゼンした。
和紙制作工房の見学などのフィールド・リサーチや実験的な作品を説明する様子。発表後には両校教員をはじめ、ジャーナリストや企業関係者からの質問に答えるなど、活発な交流も行われた。