3学科連携で大きな成果!日本赤十字社との産学共同研究『赤十字子供の家プロジェクト』

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この家に関わる人たちの思いを詰めたサイン

この家に関わる人たちの思いを詰めたサイン

生活棟と事務棟で囲む園庭

生活棟と事務棟で囲む園庭

子供たちが集うリビング

子供たちが集うリビング

4種類あるラグ・カーテン

4種類あるラグ・カーテン

旧園庭の風景を残したブラインド

旧園庭の風景を残したブラインド

細やかな配慮が各所に表れている

細やかな配慮が各所に表れている

2年前にスタートしたプロジェクトの家が2月1日に竣工

日本赤十字社と本学は、2011年から6年間にわたって「日常でいのちの意味を問う」を研究テーマとした産学共同研究を進めてきました。そのような背景から、児童養護施設「赤十字子供の家(日本赤十字社東京都支部運営、武蔵野市)」が施設の老朽化に伴う建て替え工事を行うにあたって、2年前より共同で『赤十字子供の家プロジェクト』を始動。グラフィックデザイン・テキスタイルデザイン・環境デザインの3学科・専攻の教員を中心に一部学生たちも参加し、子どもたちの新たな暮らしと地域との関わりを考えて提案しました。2月1日に竣工式を迎えた新施設では、すでに子どもたちの新生活がスタートしています。

園庭、インテリアからロゴやサインまでトータルにデザイン

まず、リビングの椅子やテーブルを環境デザイン・湯澤幸子准教授(推進リーダー)が担当。園庭や沿道部分を同・吉村純一教授と、ランドスケープを学ぶ学生たちがデザインしました。ラグやカーテンは、テキスタイルデザイン・髙橋正教授が担当。織物が園内を彩ったほか、リビング照明をデザインした学生の指導にあたりました。さらに、「巣立った子どもたちの思い出を断絶させてはならない」という思いから、旧園庭の風景をブラインドに線画で残しました。そして、子供の家に関わる人たちの思いを表したロゴやサインをグラフィックデザイン・山形季央教授・佐賀一郎准教授が担当しました。「本プロジェクトで手掛けるものは、納めて終わり、ではありません。例えば椅子は、古い家具をリペアするために人作りから始めるというスタイルに共感し、飛騨産業に制作を依頼しました。使い捨てが当たり前ではなく、モノを大切にし、壊れても修復して使っていく大切さを、子どもたちへのメッセージとして込めているのです(湯澤准教授)」。

複数学科による異なる高い専門性の組み合わせが大きな成果に

今回のプロジェクトを通して、2つの大きな可能性が見えてきました。ひとつは、新しい研究活動の形態です。本学の産学共同研究は、単独の学科内で取り組むものがほとんどでしたが、複数学科を横断したことで、異なる高い専門性を組み合わせて大きな結果を出すことができました。もうひとつは、社会に対する大学の在り方です。長期研究が可能な大学だからこそできる継続的な社会的貢献となりました。
「美大は、そもそもモノづくりへの愛情が違います。ただ作るのが好きなだけでなく、その先にある愛、価値を考える。モノを通して、環境が、人に何かしら作用していくという信念をもって取り組むから、結果が面白くないはずがありません。その成果を社会に対してより積極的に開いていくことが、我々のこれからの使命といえるかもしれません(湯澤准教授)」。

プロジェクトとして共に歩んできたから実現できた理想的な家

赤十字子供の家 園長 寺田政彦さん
「同じ視点と異なる感性で、想像を超えるものに」

正直、最初は多摩美とプロジェクトを組むという意味がよく理解できていませんでした。といいますか、想像を超えていたのです。例えば企業にデザインを委託する場合でも、思いや希望を聞いてくれるとは思います。しかし今回、完成形として優れている以上に、完成したら終わりではなく、もっとその先へとストーリーがつながるような理想的な家が完成しました。両者同じ視点で取り組みはじめたところに、私たちは考えも想像もしなかったアイデアや異なる感性が加わった、ということが大きいと思います。
シンボルマークを決定するという機会に、職員たちと「ここに込められた意味や思いを、自分たちがどう感じてどう具体化していくかが重要だ」、と話し合いましたが、これも私たちにとって意味の深い気づきをもたらしました。多摩美とはこれからも継続的につながりを持ち、良い刺激をもらえたら嬉しいですね。

赤十字子供の家 養護係長 家庭支援専門相談員 須藤陽子さん
「思いや言葉が、魔法のように形になった」

私たちの思いや抽象的な発言に対して、先生方は次々とアイデアを出し、さらにそこにメッセージを加えて具体的な形に仕上げ下さいました。その過程は、魔法のように新鮮で驚きに満ちたものでした。特に感慨深いのは、沿道に面した大窓のブラインドです。打合せの中で、「旧園舎で子どもたちにとって最も思い出深いのは築山や遊具だが、規定上残せない」、と話していたのですが、高橋先生が「それなら“記憶“を持って行けばいい」、と。その仕上がりは美術館のように素敵で、誰が見ても旧園舎を思い出されるものでした。これからの子どもたちにとってもきっと、印象に残る園舎の“顔”となるでしょう。
そして、すでに子どもたちが入居している賑やかなリビング。いつも誰かがそこにいて、ラグの上で遊んだり、広い対面キッチンで職員とおしゃべりしたり。湯澤先生が一貫して提案されていた「人が集まるリビングを。」が、まさに形になりました。
プロジェクトとして共に歩んできたからこそ、込められた先生方の思いを共有しています。既製品では得られないその重さを感じ、子どもたちや職員にどう伝えていくかが、私の今後の役割だと思います。

関連情報:
・動画で見る赤十字活動『赤十字子供の家 ~子どもたちの笑顔の為に〜』
完成した建物や子どもたちの様子、関係者のコメントなどが収められています。

・「くらし・道具の研究」展
湯澤幸子准教授の個展。赤十字子供の家の椅子をデザイン展開した作品などが展示されます。
会期:2018年3月27日(火)~29日(木)10:00~18:00
会場:寺田倉庫T-ART HALL
アクセス:りんかい線・天王洲アイル駅「B出口」徒歩約4分
東京モノレール羽田空港線・天王洲アイル駅「中央口」徒歩約5分

2018年3月17日 10:10